みなさまこんばんわ。ナガイネ!で勝負のフンドシブログ、タンゴ解説番外編です。
ついにワタクシ、全く未経験なタンゴのダンスの領域をネタにしてしまったこのフンドシブログ、何の根拠もわからずに始めてしまった、つまり、知ったかぶり と勝手な妄想で録っ散らかしてしまい、せっかくこの10年で知り合ったタンゴの仲間から総スカンを食らってしまった挙句に、一般のかたにとっては、余計ダンスの真実がわからなくなってしまった後始末を、プロダンサーにお願いしてしまうという、フンドシブログ始まって以来の「インタビュー形式」になってしまいましたが、みなさん、前回のフンドシはお楽しみいただけましたか?今回は前回の続きになっておりますので、まだお読みでないかたは、どうか前回のフンドシをまずチェックしてください。
さて、前回の続きです。ダンサーの野沢ケンジ師匠が、ワタクシの素朴な疑問に答えてくれます。後半に初公開の貴重な映像も登場します。
ではGOGO。
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ichiro: おはようございます。パート2です。よろしくお願いします。
kenji: スタンバイOKです
ichiro: 前回はいろいろありがとうございました。さっそく第一部をアップしたんですが、ご本人の感想、いかがですか?
kenji: もっとウケ狙いで 応えればよかったですかねえ。リリさんは面白かったと言っていますよ。アレをネタにクラスでもムラムラを聞いて見ましたが・・・。
ichiro: はい、ワタクシもこのムラムラ、もっとお聞きしたかったんですが、つまり熟練男性はムラムラを滅して、つまり「禅」の境地なのかと。
kenji: ムラムラ、ムカムカと踊っていても色々な感情が湧くのでしょうねえ。
ichiro: ムカムカ?
kenji: 女性は特に身勝手な男性、独りよがりな男性に内心 腹をたてているのですね。バンドのハーモニーと同じようにちょうどいいところを探しながら、足と身体で奏でるのは難しいことですね。感情もムラムラだけではありませんから。そして身体が触れている分、その感情が伝わりやすいです。
ichiro: へ?女性はムカムカ?これって踊っていて、男性はわかるものなんですか?野郎がひとりで自分の世界に入っててムカムカもわかんないからムカムカってことですか?
kenji: クラスで女性の方で男性のパートをやっている方がいるのですが、ステップの種類、次に何をやるか、女性に伝える、周りにぶつからないようにする・・・もう男性役は気が狂いそうだと言っていました。女性は女性で10センチものハイヒールで踊るわけですから、ヘタなリードではムカムカするでしょうねえ。私も女性用のヒールで踊りましたが、ヒールが邪魔で思うように動けません。
ichiro: なるほど。ムラムラできるくらいの余裕まではかなりの修行が必要なんですね、彼岸は遠いというわけですね。ここは勘違いしていました。
kenji: 男性は独りよがりで、女性の感情がわからない人も多いですよ。俺の腕の中にいたら心地いいだろう、俺は癒し系の踊りなんだって勘違いしている輩も多いですよね。でも女性には気づかれているのですよ、男性諸君、女性はそんなに甘いものではありません。
ichiro: ところで、今、ヒールという言葉、つまりダンスの際の「靴」という話が出てきましたが、コレ、決まった靴ってあるんですかボウリングみたいに。ジカタビとか、ゴムゾウリでは都合が悪いものかと?
kenji: 今のブエノスアイレスのミロンガでは若い人たちも増えてきて、スニーカーで踊る人もいますが、やはりミロンガは社交場なのでジャケット、靴、ヒールが基本ですね。最近はスニーカータイプのダンスシューズも増えてきました。しかし、タンゴが一般化する前はどうだったのでしょう??娼婦の館とかで踊られる以前の、下層社会の長屋の中庭などで踊られていた時は、ゴム草履もあったのでしょうか?
ichiro: 専用の靴があるのですか?どこで売ってるんですか?東京靴卸売りセンター(TSOC)では売っていませんか?
kenji: 日本ではダンスシューズは社交ダンス用のものになってしまいますね。ボールルームの床に合った柔らかい素材ですね。ブエノスアイレスでは石の床とかでも踊れるように、もっとしっかりしたものがタンゴに合いますね。それとタンゴの靴はオシャレでカラフルでヒールも細く種類に溢れています。TSOCの靴では床が感じられず、足を痛めてしまうかもしれません。
ichiro: その靴、前にスーツケースから出したら、右と右だったという事件がありましたが、つまり同じものを2組お持ちなんですね。
kenji: はい、最初にツアーに行った新潟でのことですね。朝慌てて靴箱から入れたので気づきませんでしたね。白と黒のコンビの靴はタンゴの基本となるので2足は持っています。他には衣装に合わせた靴。ですからツアーにはもっとたくさんの靴を持って行きたいのですが、やはり衣装が優先されますね。
しかしあの時は驚きましたよね。出した時に両足右なのですから。何があっても驚かないワタシですが、さすがに驚きました。もう一足持っていた靴はコミック用の派手な靴で、シリアスな重厚な曲には全く似合わない。よく両足右で踊りました。ゆっくり動かしているとお客様に気づかれると思い、足を早く動かしていました。
ichiro: 靴といえば、足。ダンスにはステップというのが存在するのですよね。
kenji:ステップ、基本的にはすごくシンプルです。右足左足を交互に動かしていくだけですから。
ichiro: 空手などの「型」みたいに、いろいろあるんじゃないんですか?
kenji: 前に動くか後ろに動くか横に動くか それを組み合わせてステップにしていきます。女性はコントラバスのように同じリズムで右足左足交互に歩いていきます。男性はそれを左足でも右足でも応じることができます。男性にはつねに一歩に二つ以上の選択肢があります。その選択肢をあやとりのように紡いで踊っていきます。
ichiro: ということは、型とか、プロレスでいう卍固めとかいう固有の技はないと。私はすっかり耳元で男性が「次卍固め」とか「バックドロップね」とか囁いて進めているのかと思っていましたが、全然違うんですね。
kenji: 固有の型はありますよ。センターダといって女性を膝の上に座らせるポーズですが、それを飛び乗ってきたり、様々なバリエーションがありますが、基本は自由に踊るあやとりのような、水が流れながら形を変えていくような動きが、ワタシは理想としています。
ステージでは 曲に合わせて振り付けてあるものもあるので、より型を重視しています、特にコミックは!!
初心者の人に教える時は、幾つかの「型」から覚えてもらいます。ギターでも最初からフリージャズは出来ないですよね。
ichiro: つまりギターでいうところの最初はC、次にセーハが必要なF、これで一曲弾けたら、次はアルペジオで、3フィンガーと。で、ロックの決めリフとかキメに発展していくけれど基本は「 神 田 川 」と。
kenji: そうですね、神田川を 自由に弾き語れるように コードを覚えます。そこで終わらないでもっともっとギターを勉強していたら、もっと可能性が増えたのに・・・・・ギターでは挫折してしまいましたねえ。
ichiro: 何事も基本が大切ということですね。積み重ねて、背負い投げまで発展すると。で、このステップというもの、これは新しい、まだ誰もやってないものを開発したり、するものなんですか?それともステップは案外シンプルで、上半身やステップとは切り離されたパフォーマンスとして、そっちを創作する方向ですか?
kenji: 右足と左足で前横後ろに動くこと その足を払う、引き摺る、取る、絡める、止める、引っ掛けると様々な可能性があります。それをアウトサイド、インサイドバランスで組み合わせていきますといろいろなことができます。私たちが始めた頃は、映像も少なく苦労しましたが、YouTubeであらゆるダンサーの映像が手に入ります。右足と左足とでやるものですから、可能性は追求され尽くしたでしょう。あとはその使い方、ここにタンゴで重要な個性というものが必要になります。
身体能力では アルゼンチンのダンサーは全く違いますから、そこでどのようにしようかというのもタンゴの面白いところです。
私たちが最初にロンドンのフェスティバルに出演した2000年、10組のアルゼンチンのトップダンサーと一緒でした。エドウァルド&グローリア、グスタボ・ナベイラ&ジゼル・アン、フェルナンダ・ギー&ギジェルモ・メルロ、ガブリエル&ナタリア、エステバン・モレノ&クラウディア、モーラ・ゴドイ、カルロス・ガビート・・・・・などなどカリスマダンサーたちと一緒に 東洋の無名のが何をやりましょう????そこでこんな素晴らしいダンサーをずっと見ているお客様は疲れるだろうなあと思い、私たちは息抜きをさせる役だ、 素晴らしい息を飲むようなサーカスにもピエロは必要ですよね。そんなに気持ちで黄色い人形の「イルシオン・デ・ミ・ビダ」をやって見ました。
タンゴでは黄色い衣装がは使わないのですが、私たちは黄色の衣装、ましてリリさんは黄色のカツラ、傘を持ってスタンバイしていると、共演者たちの名ダンサーたちは私たちから離れていくのです。「コイツラ何を始めるんだ??こんなの呼んだのだれだ??」みたいな空気がいっぱいの冷たい視線。ステージに立つとみんな袖にきて ジッと怒ったような顔で見ているんですよ。
今まで素晴らしいダンサーのエレガントなキレのいいダンスを息を飲んで見ていたロンドンのお客様は大笑い、舞台の袖に戻って来ると 名ダンサーたちが 素晴らしかったとハグの嵐。
ここが私たちの原点なんです。何とかして自分たちの味を出す。必ず入り込むスキマはあるということです。それで黄色い衣装の人形が ロンドンのビデオから世界中に広まりました。
ichiro: 我々のと演奏ですが、八千代座のイルシオン、が、コレ、今回初公開です。
ichiro: 少々照明が暗いんですが、これ、このときのコンサートのまさに山場となっていましたね。花道ついてましたもんねえ。
kenji: 何十回も イルシオン踊っていますが、これも感慨深いものがありますよね。なんせ玉三郎さんも立った歌舞伎の舞台で 花道まで使えたのですから、印象深いステージでした。
ichiro: 2分36秒のリリアナさんが振り向くところ、ワタクシ、ここをみると何度も胸がキュンとなってしまいます。
kenji: これまでもカツラがとれたり、リリさんが逆方向に倒れて受け止められなかったり・・・と 様々なことがおこりました。
ichiro: カツラがとれたのは水戸ですね。あれは貴重な瞬間でした。受け止められないという事故もあったんですか、これは初耳です。つまりリリアナさん後頭部落下と。
ichiro: そのときは、ケンジ師匠が終了後に謝るんですか?ギャラもらえないんですか?口きいてもらえないとか。
kenji: いやあ、私たちの場合は何で逆に倒れちゃうのさあ とムっとするくらいですねえ。そのロンドンでミロンガを踊っていたところで、私がリリアナさんを左手の指先でクルクル回すところがあるのです。
その日蕁麻疹が出てしまって、それを隠すためにリリアナさんシルクの黒の手袋をしていたんです。それが私の指に絡まり、指が千切れそうになりました。演技の最中に私が逆回りをしてようやく解けました。そのビデオがまた世界中に販売されました。そんなこともあっはっっはのリリアナさんです。
ichiro: 女性は強いんですね。これはミユキタンゴにも相通づるところですが。ところで、このイルシオンのダンス、リリアナさん以外の相手だと不可能なんでしょうか?生徒さんでやってみたいとか言ってくる勇敢なかたがいたらどうお答えに?
kenji: 女性がギャンギャン言わないから、続けて行けるんですよね。イルシオンも台風もフェリシアも リリアナさん以外だとあの味が出てこないですねえ。上手いダンサーはたくさんいますけど、あの可笑しさは私たちが十分楽しんでいます。生徒さんはやりたがらないでしょう、もっと正当的なカッコいいタンゴがいいと思いますよ。
ichiro: そんな生徒さんを教えるお教室、どこの雑居ビルでやられているんですか?全くの素人でも歓迎してくれるんですか?先輩の生徒さんが怖かったりしませんか?
kenji: 今はいろいろなところでたくさんの先生が、雑居ビルで教えていますよ。もちろん最初は素人です。
今年の発表会にイチロウさんにも出ていただきましたが、あんな自由なアバウトな奇想天外な発表会ってないですよね。自由な発想が 自由なダンスを作る、です。
ichiro: その時のチラシがコレ。
これはすごかったですね、ダンスの発表会なのにシナリオつきの演劇仕立てでした。
kenji: 習いに来てくれている人も、様々なプロフェッショナルな方々がいますから、その能力を十分使わせていただいています。
ichiro:ところで、レッスンの後は、たいがい最寄りの「天狗」で打ち上げているという情報があるんですが、これって「あんたあそこ違うんじゃない?」ムカムカ?な反省会ですか、それとも方向としては合コン?
kenji:レッスン後の親睦会ですか?最初は10数年前に吉祥寺のクラスの方々が、クラス終了後に飲みに行っていてそこに私たちが混ぜていただきました。それが高じて 毎日のクラスの終了後にまで発展しています。毎日居酒屋生活。反省会はあんまりないですね。細かいことを追求しない私たちですから。
ichiro: つまりレッスンに勇気を出して参加すると、天狗もついてきて、お友達ができる というわけですね。これは私のような友達がいないタイプにとっては朗報と。
kenji: リリさんがいますから、基本に「渋さ知らズ」がありますよね、イチロウさんもご存知の。そこのペーさんやスガちゃんもタンゴ踊りますよね。リマさんが始め、リマタンゴが生まれ、ミユキさんも渋さとやっていて、ファンダンゴスではバイオリンの谷本さんが渋さ育ちで、その縁でタンゴの節句が生まれ、・・・・・すべてがリリアナさんの長きに渡り描いてきた構図なのですなあ。
だからクラスも飲み会もツアーも そこが原点であり、基準なんですね。
ですから私たちのクラスから渋さのワークショップとステージに出させてもらっている人多いんですよ。ステージ交換留学です。
ichiro: 長い時間おつきあいありがとうございました。では、最後に今月末からのツアーのことを。
ichiro: ファンダンゴスとの共演もありますね今回も。ミユキタンゴとファンダンゴス、ここだけの話、どっちがやりやすいですか。いいですよ、一言でズバッと言っていただいて。
kenji: ダンサーはやりにくいやりやすいはないんですねえ。与えられた場面で与えられたことを最善を尽くすということですなあ。
両チームとも長いツアーを一緒にやらせてもらっているので、その辺の違いはありますよ。ファンダンゴスは小倉を中心に動き回るので、打ち上げが終わったら私たちはホテル、メンバーは家に帰ります。ミユキタンゴは移動に次ぐ移動、私たちは公共交通機関でも動きますから、iPadで時間を調べ、どれが安いか調べ、どれが最善か調べながら移動する、これが元国鉄マンを父に持つ私としては楽しいことなんですよ。
ステージの作り方にしても 違いますよね。ファンダンゴスのタンゴの節句の場合、事前のリハーサルで曲順MCなどを綿密に決めておいて、ステージをこなしながらより先鋭化させていく。ミユキタンゴは本番直前にバンマスが決め、みんながあたふたと譜面や衣装を揃える。これがまたそれぞれのバンドの個性が出ていて、両方にお世話になっている私たちとしては楽しいんですよ。それとメンバーの個性デスよね。
これはどちらが好き、どちらがやりやすい というレベルで語れる問題ではありませんね。
ああ、なるべくして集まった人たちだ というのがわかりますから。
どちらも楽しませてください。
ichiro: ところで、今回も師匠は歌を?ファンダンゴスの一部から不満やダメ出しの声が出ていると聞きますが。
kenji: ファンダンゴスは ワタシ潰しのために 本物の歌手を雇い入れてきていますからねえ。
ichiro:…。
ichiro: 今回は今まで最長のツアーで、しかも全てケンリリ師匠と一緒というものですね。楽しみにしています。
kenji: タンゴの節句(トリオ・ロス・ファンダンゴスが企画している毎年恒例の公演)ではファンダンゴスのスタッフの方々が音響照明会場と働いてくれます。
ミユキタンゴではギターの方が音響設営やらメンバーもいろいろな役割をします。ダンサーも経費削減のための歌手をやります。これがまた受けるんですねえ。
長いツアー 楽しみでっす。
ichiro:トイレは早々に済ませますので、よろしくお願いします。今日も長々、入力が使い物にならないipadを駆使しておつきあいいただきありがとうございました。
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ダンスというのはボンヤリとイメージするのと、近くで見るのと、ご本人たちが行っていることと、こんなに違いがあるのかというのがワタクシの感想でしたが、みなさんはいかがだったでしょうか。でもよく考えたらコレ、音楽そのものもそうですね、やっていることこそ形が異なりますが、内容は全く同じようにも感じます。そしてどちらもこのように記録として映像に残そうと思えば残りますが、ポイントはまさにその空間をその瞬間に演じる行為ということが共通しているとワタクシは感じました。
しかし、さすがベテランダンサー、ワタクシがウケを狙って持っていこうとする質問を、上手にカワして、ペースを持続させておりますですね。
しかもこれもまた、音楽と同じところで、一緒に演奏するのは誰だって楽しいものですが、ただギャンギャンやるだけ、逆にただしっとりと癒やしなものだけ、そもそも ただ始まって終わるだけって いうのも、ちょっとだったら注目されるんだけど、確かに長持ちしませんよね。
ここですねえ。
芸の世界ですね。
あなたのリードで島田も揺れる~♪
どうです、これをご覧のおとっつあんならびに、おっかさん。
青春は燃える陽炎だった、みなさん。
オトナの階段が見えて来ましたか?
ケンリリ師匠のサイトはコチラ。
http://www.yy.ale.co.jp/kenji_liliana/japanese/j_frame.html
天狗の打ち上げもきっと楽しいですよ。
この写真は、今年の春に行われた、横濱エアジンでのミユキタンゴ&ケンジリリアナ、お客様が撮影してくれたものです。
どうです、このスペースでの堂々の演技。
リリアナさんの「島田」が天井に当たりそうですね。
ご本人たち、畳二畳からと言っていますが、このとおりコレ、ホントなんですよ。
ツアーをお待ちのみなさん、今回はすべてケンリリ師匠とご一緒する、ダンス入り公演です。
どうぞ、間近でご覧になってください。